またね、瞳のブルー

3/5
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
 すると、栢野は薄暗い部屋の中、くまのぬいぐるみを抱きしめて体育座りでふさぎ込んでいた。その目元は、確かに殴られたかのように青い。 「おい栢野! 何やってんだよ!!」  両手を栢野の肩にやって怒鳴りつけると、栢野は僅かに微笑み、そして涙をながしながら俺に言った。 「どうしよ……また、目が青くなっちゃったよ……」 「……何言ってんだよ、お前……」  聞き返していたが、本当は理解していた。彼女の青さを。  以前から、栢野はクラスのわーきゃー騒ぐ女子を羨ましそうに見つめていた。同時に、男共と馬鹿をやる俺のことも。  出会った頃から俺と栢野はそれなりに仲が良かったが、栢野より俺の方が喋りは上手かった。だから、俺と栢野の間には友達の差がついた……どころの話じゃない。栢野はずっと一人ぼっちだったんだ。  それを、俺は見ないふりをしていた。彼女なら耐えられる。彼女だったら気にも留めてない。第一俺にしてあげられることは何もない。そんな風に誤魔化して。  けれど、彼女は耐えられなかった。ずっと一人ぼっちで、居場所を無くして、青かった瞳は、更に青くなってしまったんだ。 「この目嫌なんだ。だから、ぶった」 「……ごめん」  俺は彼女を抱きしめた。それ以外に、出来ることが浮かばなかった。  彼女を抱きしめて数分。耳に雨粒が跳ねる音がした。 「雨」  彼女は顔を上げ、雨をじっと見つめた。 「天気雨だな」  俺も顔を上げ、雨を見る。 「青ばっかり。脳みそまで青くなっちゃいそう」  冗談を言う彼女に、俺はクスクスと微笑み、「大丈夫だよ」と両手を組み、根拠のない根拠を見せた。これに、彼女も柔らかく微笑む。この様子だと、何だかんだ言っても外へ出たいらしい。 「外出るか?」 「うん」  俺は彼女の手首を引き、外へと飛び出した。  ザアザア降る雨の下、俺と栢野が空を見上げる。風邪引くわよって栢野の母が来てくれたけど、引けるもんなら引きたいし、どうせこんな日に限って風邪は引けないし。悪いけど、「結構です」と栢野の母にバッサリ答えた。  そして、雨の降り続く中、俺等は……。 「栢野さん、風邪引くよ」  俺とも栢野とも違う声に、俺も栢野も驚いて右を向く。すると、栢野の頭の上に傘を差す女子が一人おり、その後ろには数人の女子がいた。 「……え?」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!