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「だからあの生物と話しているのよ」
タタに声を届けながらも、サクは少女と巨獣との念話も感受している。
「敵意はないっつっても、クジラの考えることなんか分かりゃしねえ。
それにあの山みたいな体は、じゃれついてこられただけでもアウトだぞ。
下手に刺激するよりとっとと逃げるに限る」
「刺激というなら、この船のエンジンや外輪が立てる音の方が刺激するかも知れない。
じゃれつかないようには言っておいたけど」
サクの言葉を聞いて、タタは慌てて伝声管に指示を飛ばした。
「おい、発進中止だ。
いや、中止っつうか待機だ。
機関室には最低回転数を維持と伝えろ」
それから頭を掻きむしりながらうろうろと歩く。
「で、どうすればいいんだ?
いや、そうだ。あんた、あのマチルダって講釈師みたいに火の魔法とか使えねえか。
あれだけデカくても獣なんだ、火を怖がるんじゃないか」
「わたしは反応魔法は使わない」
「なんだ、その反応魔法って」
「術者自身の魔力と自然界にある魔法物質を反応させて、火を起こしたり、風を起こしたりする、いわゆるあなたが魔法と思ってるもの」
「よく分からんが、じゃあマチルダに頼むか。
あの炎の魔法なら、いっそ焼き殺せるんじゃねえか」
言うなり、タタは駆け足で階段を下りる。
あの規模の生物を殺傷できるほどの反応魔法などそうそうない。
好きにさせておいても良かったのだが、少女と巨獣との対話を一応タタにも伝えておくことにした。
「あの生物を安全なとこに案内してあげるって話になってるわ」
「は?」
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