黄色い悲鳴はあげられない

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「ねぇ、陽子」 「なに? 危ないよ」   隆一はベランダからちょっと身を乗り出すようにして、顔をのぞきこんでくると、 「俺はさ、陽子に認めさせたくて、喜ばせたくってやったわけ、それがどういうことかわかってる?」  いつになく真剣な声で言った。  ちょっと理解するまでに時間がかかった。 「は、はぁ?!」  変な声が出た。基本的に驚いた時に黄色い悲鳴的な可愛い態度はとれない。 「そ、そんな自分勝手な理由でクロウ様やらないでよ!」  続いて出たのはそんな言葉。 「おお、そう来るか……」 「なんかもうね、知らない!」  色々処理し切れなくなってそういうと、部屋の中に戻る。 「まーいいや、おやすみー」  隆一の呑気な声が追ってくる。  ベッドに倒れ込む。  ドキドキなんてしていない。気のせいだ。隆一の言葉に深い意味なんかなく、ただただ昔の喧嘩を根に持っていただけだ。  悔しいから、上映中、クロウ様が喋った瞬間に会場内に湧き上がった悲鳴に私が含まれていたことは、絶対に教えてやらない!
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