黄色い悲鳴はあげられない

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「きゃー!!」  会場内に響き渡る黄色い悲鳴の数々。それを受けて微笑んで手を振るステージ上の男。私はうまく処理できず、 「ぬぉぅ」  という色気も何も無い変な声をあげた。  人気アニメの劇場版、完成披露試写会。  最後までキャストが発表されず、色々な憶測が飛び交っていた敵の幹部、のイケメン。  舞台挨拶も中盤、 「ではここで、スペシャルゲストです! 四天王、クロウ役の」  司会のお姉さんの言葉。ここで既に会場内には黄色い悲鳴が沸き起こる。 「おー」  黄色い悲鳴をあげるのがとても苦手な私は、それでも一体だれなのだろうとワクワクしていた。 「手塚隆一さんでーす!」  続く紹介。高まる歓声。出てくる青年。拍手。 「クロウ役を演らせていただきました、手塚隆一です。ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、普段はネナトウーラというグループでアイドルやってます。今回はこんな良い役を頂けて光栄です」  ハキハキと笑顔で挨拶する青年。 「ちょ、あのリュウじゃん! ねぇ!」  隣の友達が私の腕をひっぱる。  私はただ無言で頷く。  マジかよ……。
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