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男は、若いながらもそれなりに仕事を覚え、駆け出しの山師として独立したその日、山の木の売買をするため、自分の家からかなり遠い村に住んでいる、親戚の叔父の家に来ていた。
叔父の家路の途中にある松の木が、男が子供の頃は細くて小さかったため、車が通れたのだが、今では大きく太くなって、道の半ばぐらいまではみ出ていた。そのため、車が通れなくなっていた。
男「見事な松の木だ。しかし、車が通るには邪魔だ。」
男は、松の木の手前で軽トラを止めて、叔父の家まで歩いた。叔父の家に上がり、山の木の売買の話が終わると、男は軽トラまで戻り、荷台に積んであるチェーンソーを下ろした。
男「叔父さんも、この松の木は邪魔だと言っていたし、この辺りに住んでいる人達も、この松の木を切ってほしいみたいだから、俺が切ろう。それにしても太い。こんな太い木は初めてだ!!腕がなるなあ。」
男はチェーンソーのエンジンをかけ、松の木を切ろうとした瞬間、この近くに住んでいる和尚に止められた。
和尚「その木を切るな!!その木もまた、この村人の1人だ!!」
男「和尚、何をボケたことを言ってるんだ!!この木は村人なんかじゃない!!ただの邪魔な松の木だ!!見てみろ、道路にこんなにはみ出して、車が通らないから、ここから皆、歩かないと行けない!!」
和尚「お前は何も分かってない!!とにかく、この松の木を切ることは、このわしが許さん!!さっさとそのチェーンソーをしまって帰れ!!」
男は和尚を睨みつけながら、チェーンソーを軽トラの荷台に積んだ。
和尚「またね。」
男「何が"またね"だ!!女子高生みたいに気持ち悪い!!絶対いつか、その松の木を切ってやるからな!!」
男は軽トラに乗って、叔父の村を去った。
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