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5年後
男は松の木のことをすっかり忘れて、忙しい毎日を送っていた。男が叔父の家に再び訪れたのは、和尚に松の木を切るのを止められてから、5年の月日が流れていた。
男「すっかり忘れていた。今日こそは、この松の木を切ってやる。例え、和尚に止められてもだ!!」
男は叔父の家で用事を済ますと、軽トラの荷台からチェーンソーを下ろし、エンジンをかけた。そして、松の木を切ろうとした瞬間、またもや和尚に止められた。
和尚「その松の木を切るな!!何回も言わすな!!」
男「和尚、危ないから少し離れてろ!!」
和尚「お前は何も分かってない!!その木もまた、村人の1人だ!!」
男「それは前にも聞いた。」
和尚「その松の木は、わしの妻だ!!わしは、この松の木と結婚したんだ!!」
男「はあ?」
男は思った。とうとう、和尚は頭がおかしくなったと。
和尚「お前、わしは頭がおかしいと思ってるだろ?しかし、わしはこの松の木に恋をしたんだ!!お前が女性を好きになって恋をするように。そして、わしは、この松の木と結婚したんだ!!」
男は、和尚の真剣な眼差しに圧倒された。というより、この和尚とは関わらない方がいいと思った。
男は松の木を切るのを止めて、チェーンソーのエンジンを停止し、軽トラの荷台に積んだ。
そして、軽トラに乗り込んで、運転席側の窓ガラスを半分ほど下げて、和尚に言った。
男「和尚、結婚おめてとう。いつまでもお幸せに。」
和尚「おお!!ありがとう。」
そして、男は去って行った。
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