プロローグ01 [成田ミチ]

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ここでもまた、ミチは使用人に騙され、 財産を持ち逃げされてしまい、 わずか5年間で資産ゼロとなる。 女中も使用人も全てヒマを出し、 自身で家事をしようにも、 それすらままならず。 『…であれば』と決心したのは、 自分の親と同様、娘を売ることで。 売ると言えば聞こえは悪いが、 早い話、資産家に娘を嫁がせたのだ。 ユリ、キク、フジ。 …2歳違いの3姉妹は とても器量良しで引く手あまただった。 16歳の誕生日を迎える毎に、 1人ずつ結婚させ、莫大な結納金を貰い、 それで生計を立てる。 その結納金も底をついた頃、 大吾郎が起業。 父親の血を継いだのか この長男は恐ろしいほど商才に長け、 気付けばミチは左うちわで暮らしており。 次男の小次郎も、 地元デパートの社長の娘と恋仲となり、 婿養子に入った。 そして、現在。 実家よりも、もっともっと大きな家で 優雅に寛ぎながらミチは思う。 多少、苦労はしたものの、 私の人生は間違っていなかった…と。 だがしかし、彼女は知らない。 娘3人が、 売られたことを未だに恨んでいたり。 長男・大吾郎が『娘は売るモノ』 …そんな誤った認識を持っていることを。 誰からも愛されていると 信じて疑わない成田ミチ・82歳。 彼女の周囲は、 敵だらけなのであった。
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