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「だって彼女と争ったって得なことないじゃないですか。部下より恋人の方が有利に決まってます。東条主任に悪口を言いつけられたら、嫌われるのは私ですよ」
「まあ、あなたでは勝ち目はないでしょうね」
彼を睨み付けていた目が涙目になり、慌ててうつ向いた。
「戦闘能力の話です」
「……」
「あとは?」
どうやら私は自分に鞭打ちたいらしい。
ここまで来ればどうせ同じだという開き直りもあって、懲りない私は一番の悩みを打ち明けた。
“最近、江藤さん元気がないって彼が気にしてる”
あれを聞いてから、主任に私の気持ちがばれてしまうのは時間の問題だと思うと、私はさらに職場で気を抜けなくなってしまった。
体調が悪い日もあれば、仕事でつまづき落ち込む日だって普通にある。
それらがすべて彼女の意地悪い邪推と嘲笑のネタになるのがしんどい。
「息がつまるというか、悪循環に陥っちゃって」
「それが彼女の狙いでしょうね。あなたを自滅させて、東条主任との関係をぎくしゃくさせるのが」
私の話を聞え終えた彼はさらりとした口調で感想を述べた。
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