1863人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
「百歩譲って相手ができたとしても、まだ東条主任に気持ちがあるのに失礼じゃないですか」
「本物である必要はありません。問題が解決するまでのダミーでいい」
彼の言葉をよくよく反芻したあと、私は首を振った。
私には非現実的な話だ。
「そんな贅沢ができる女なら、三十年も苦労してません」
ダミーの恋人すら調達が難しい女の惨状は、本人にしか分からない。
諦めて荷物をまとめ始めた私は、次に聞こえた突拍子もない提案にもう何度目なのか、荷物を取り落とした。
「なら、僕と付き合っていることにすればいい」
最初のコメントを投稿しよう!