偽物の関係

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あのホールでの会話のあと、皆川さんは私を食事に連れて行ってくれた。 ただし、糖度はゼロだ。 契約締結後の事務確認のようなもので、極度の緊張と恐怖と後悔に苛まれていた私は何を食べたかすら曖昧にしか覚えていない。 まず彼は私に禁酒令を言い渡した。 ここで恋人を束縛する甘い類のものを想像して調子に乗ってはいけない。 一度は女をやめると絶望した割には私も往生際が悪いもので、一瞬、勘違いしなかった訳ではない。 けれど数分後にはそんなおめでたい自分を呪った。 彼からは企業人としての自覚の無さをこっぴどく叱られた。 「路上でのびている間にバッグを盗まれたら?財布には社員証も入っているはずです」 「いや路上でのびたことは今まで一度も」 「ホテルではのびたでしょう。相手が悪ければ同じことですよ」 普段はもう少しまともだとアピールしようとした私の口答えはぴしゃりと叩き潰された。 「機密情報を扱う部門の社員としての自覚が足りない」 「……はい」 返す言葉もなく、ひたすら平伏して反省する。
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