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レンが小人達の集会の中に、笑顔が見えない、少し空気が違う一団を見付けた。
すぐ側に居た、年配の小人を捕まえて尋ねる。
「アレ、何かあったの?」
呼び止められた小人の戦士は、持っていた手斧を肩に上げて、深妙な顔を向けた。
「誰かやられたらしい。今日は三人だ」
「邪夢に?またかよ」
「【中島家】に行った三人だ。食われてはいないが、かなり重症らしい」
「ふーん、あんなトロい団子にねぇ」
「レン君は強いからな、ピンと来ないかもしれないが、都会に行くとかなり大きくて素早い邪夢も居るらしいからな。運が悪かったんだよ」
赤い帽子を脱いで黒い髪をかき上げながら、レンは不服そうに口を尖らせた。まるで自分が倒してきた何体もの邪夢が小物ばかりに思えたからだ。
「レン君、今日の収穫終わったなら、あっちでマリベルとサムが受付してるから、タマゴを預けて邪夢の報告をしておいで」
「ああ、わかってる」
「タマゴはちゃんと預けろよ、最近ゴマかす奴が居るからな」
「わーってるよ、んじゃ、ありがと」
レンは手斧の戦士と別れた。
その内に青い帽子を揺らしてジンが追いつく。
「何話してたの?」
「お前こそだろ、いちいち付き合ってんじゃねーよ」
二人は並んで歩きながら、受付に向かう。
深刻な顔で何やら話し合う一団を横目に通り過ぎながらジンが口を開く。
「邪夢にやられちゃったんだって」
「知ってる」
「中島さんの家で三人だって」
「知ってる」
「すっごいデカいヤツらしいよ」
「あっそ」
「明日は南西部に応援頼んで来てもらうんだって」
「なにぃ?北東部(ウチ)で処理しないのかよ」
「あ、コレは知らなかった?」
「うるせ~よ、さっさと喋れよ」
「レンはあんまり他の人とお喋りしないから、こういう情報に疎いんだよ」
「……」
「中島さん家の噂だって結構前からチラホラ出てたのに」
「……もういい」
「あ、すぐスネる。もう教えてやんないからねー」
「うるせ~」
受付に着いた赤帽子は、彼が聞かなくても勝手に喋り出す事をよく知っている。
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