第一夜 夢珠

5/5

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
 後を追うように床に着地するレン。赤帽子は軽やかに弾み、左回転する体は大剣をさらに加速させた。二回ほど空回りするも、未だ に異形は空中にあり、加速するレンと大剣は大きな風車となって床を滑空した。  異形の体躯は再び床を踏みしめる事なく、三枚におろされ、体液を撒き散らしながら一瞬の闇色閃光を放ち、霧散した。  レンは回転を止め、大剣を肩に担ぐ。  まだ、終わっていない。  後ろを振り向く。  青い帽子の弓矢が、空中に浮かんだ邪夢をウニのように針だらけにしながら、奇声を上げさせている。  矢継ぎ早に繰り出される光の矢は、異形の体躯の下部分を高速で撃ち続ける。  弓矢の力を下腹に受け、空中で縦回転を続けながら針の山と化していく邪夢。  苦しみを訴えながら黒く光る【眼】を高速の矢が撃ち抜いた時、その体躯は闇色に光って消えた。  レンは大剣を肩に担いだまま、青帽子に近づく。 「結構ヒドイよな、その技」 「レンみたいに8連コンボ出来ないもん」 「コンボ数なら30以上はイってるだろうが」 「非力な僕は工夫するしかないのです」  笑顔を見せる二人の小人の背後で夢珠の輝きが薄れつつあった。  それは完成を意味する。 「あ、落ちて来るぞ」  レンは夢珠に向かって駆けた。  軽い身のこなしでベッドからはみ出したシーツの端を掴み、ヒトの眠る高さまで飛び上がる。  毛布の起伏を山から山へと飛び移り、ヒトの肩に飛び乗る。丁度、夢珠の真下へ。 「待ってよー、もぉ、いっつも先に行っちゃうんだから」  小さく愚痴をこぼしながらジンが毛布の上を駆けて来る。  浮力を失い、落下する夢珠。  このまま、もしもヒトの身体に触れたならば、夢珠はそのままヒトの身体に溶け込み、吸い込まれるように還る。だが、今回は赤い帽子の小人の両手の中に抱きしめられた。  大きなスイカを抱えるように、レンが夢珠をしっかりと掴む。  それは表面が虹色に光る、いつになく上質な夢の塊だった。image=503941771.jpg
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加