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後を追うように床に着地するレン。赤帽子は軽やかに弾み、左回転する体は大剣をさらに加速させた。二回ほど空回りするも、未だ に異形は空中にあり、加速するレンと大剣は大きな風車となって床を滑空した。
異形の体躯は再び床を踏みしめる事なく、三枚におろされ、体液を撒き散らしながら一瞬の闇色閃光を放ち、霧散した。
レンは回転を止め、大剣を肩に担ぐ。
まだ、終わっていない。
後ろを振り向く。
青い帽子の弓矢が、空中に浮かんだ邪夢をウニのように針だらけにしながら、奇声を上げさせている。
矢継ぎ早に繰り出される光の矢は、異形の体躯の下部分を高速で撃ち続ける。
弓矢の力を下腹に受け、空中で縦回転を続けながら針の山と化していく邪夢。
苦しみを訴えながら黒く光る【眼】を高速の矢が撃ち抜いた時、その体躯は闇色に光って消えた。
レンは大剣を肩に担いだまま、青帽子に近づく。
「結構ヒドイよな、その技」
「レンみたいに8連コンボ出来ないもん」
「コンボ数なら30以上はイってるだろうが」
「非力な僕は工夫するしかないのです」
笑顔を見せる二人の小人の背後で夢珠の輝きが薄れつつあった。
それは完成を意味する。
「あ、落ちて来るぞ」
レンは夢珠に向かって駆けた。
軽い身のこなしでベッドからはみ出したシーツの端を掴み、ヒトの眠る高さまで飛び上がる。
毛布の起伏を山から山へと飛び移り、ヒトの肩に飛び乗る。丁度、夢珠の真下へ。
「待ってよー、もぉ、いっつも先に行っちゃうんだから」
小さく愚痴をこぼしながらジンが毛布の上を駆けて来る。
浮力を失い、落下する夢珠。
このまま、もしもヒトの身体に触れたならば、夢珠はそのままヒトの身体に溶け込み、吸い込まれるように還る。だが、今回は赤い帽子の小人の両手の中に抱きしめられた。
大きなスイカを抱えるように、レンが夢珠をしっかりと掴む。
それは表面が虹色に光る、いつになく上質な夢の塊だった。![image=503941771.jpg](https://img.estar.jp/public/user_upload/503941771.jpg?width=800&format=jpg)
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