第ニ夜 戦士とチカラ

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第ニ夜 戦士とチカラ

   淀んだ空気が澄んでいく。  堆積した埃塵が経過した時間の中で月明かりを忘れる。入れ代わりに思い出すのは青白い大気に溶けた朝露の囁き。  幾重にも折り重なる湿り気を帯びた緑葉が呼吸し、呼応する小鳥たちの囀りが重なり合っては羽音を残す。  微かに。  遠く。  二つの小さな影が朝靄に紛れながら昇り始めた陽光から逃げるように家路を急いでいた。  背中に担いだ荷袋を大きく膨らませ、軽快に屋根瓦を駆け、飛び移った塀の上を伝い走る。  その俊敏さにネズミの姿を重ね見るが、赤と青のカラフルな帽子と服装は狩りを終えた二人の小人が帰る姿なのだと朝焼けに告げていた。  二軒分の塀の上を走り抜け、次の家のガレージに飛び込む。そこに駐車されている白い自家用車に用事はなく、その車の下に眠る白い猫に駆け寄った。 「おはよう。今日もよろしくたのむよ」  青帽子のジンが猫の背中に登りながら声をかける。  猫の毛足が長く深い。掴んでよじのぼるのに容易く、また隠れる時にも都合が良い。足音は小さく、スピードも中々のモノだ。  そしてなんと、首輪という『掴む所』がある。  赤帽子のレンも背中に登り、首輪を掴んで身体を支えると、白い猫・ラグドールは車の下から抜け出し、朝の公道を足音もなく走り始めた。
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