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白猫は塀の上から屋根を伝い、時には柵をくぐり抜けて独自のルートで住宅街をすり抜けて行く。弾むネズミは姿を変え、それはしなやかな猫の身体に赤と青のリボンが揺れているだけのように、朝の町に風景として溶け込んでいった。
町の中央に通る二本の道路は交差して方面を分ける。それは人間達の動脈として重用されると同時に、小人達の『領地(エリア)』を区分していた。町の北東さ部に位置する中で、大きく古めかしい日本家屋に白猫ラグドールは肉球を忍ばせた。
農家を生業としているその家は、母屋とは別に大きな倉庫を所有している。農具は勿論だが、農耕機械や木材、ハシゴ、錆び付いた自転車まで半ば乱雑に収納されている。早朝という事もあり、まだ人気は無い。
白猫は開け放したままの倉庫の入口から苦もなく侵入すると、片隅に置かれた四つ脚のソファーに居座る。かなりの月日をそのソファーは倉庫の中で過ごしたらしく、あちこち擦り切れ、開いた穴から茶化たスポンジが覗いていた。
白猫の背中から飛び降りる小人達。
「ありがとう。助かったよ」
と、ジン。
「またな」
と、レン。
「にゃー」
とラグドール。
朝露に揺れる雑草の青い花が、雫を土くれに与えながらそれを見守る。
古倉庫が小人達のアジトであり、北東部の中心だ。
ホコリの舞う納屋の奥で、何十人もの小人達が集まり始めて居た。
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