プロローグ02 [成田リナ]

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プロローグ02 [成田リナ]

官能小説を書き始めたのは、 他でも無い。 父に許婚を用意されたからだ。 それは中学2年の春だった。 滅多に家にいない父が、 酒くさい息をプンプンさせながら、 私の部屋に入って来てこう言った。 「リナの結婚相手を決めてきたからな。 コレを見ておけ」 床にドサリと投げ捨てられた、 大判の封筒。 『あのあのっ』と動揺しているうちに、 父は姿を消した。 成田家では父に逆らう者はいない。 たまに祖母のミチが文句を言うが、 それは単なるお小言なのだ。 仮にも娘の結婚相手の資料を、 床に放っていくとは。 さすが暴君。 しょんぼりとソレを拾い、 恐る恐る中を見た。 桜小路 春馬…私より7歳年上で、 現在は有名私立大学の3年生。 写真を見る限りでは、容姿端麗だ。 だが、ピンと来ない。 なんと嘘臭い笑顔だろうか。 幼い頃から読書ばかりして育った私は、 知的な男性に憧れていた。 ブラッドベリみたいに空想家で、 キングみたいに溢れる創作意欲を持ち、 ヘミングウェイみたいに壮大で、 サリンジャーみたいな凶気を… って、ごめんなさい。 カッコつけてしまいました。 本当はラノベ大好きです。
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