プロローグ02 [成田リナ]

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そんなある日のことだった。 「あ~、いいところに、マミ先生」 その日、編集部に顔を出すと、 松沢編集長が私に声を掛けてきた。 ちなみに『マミ』というのは私の ペンネームだ。 手土産の菓子折りを渡すと、 編集長は背後の男性を前に押し出す。 「マミ先生の担当になる中田です。 こいつ元々は文芸誌の方にいて、 官能小説はお初なんですよ。 まあ、お手柔らかにお願いします。 ほら、中田も挨拶しろ。 前に言ってただろ? 大学在学中にデビューした『マミ』先生。 可愛いからって惚れるなよ」 …これが、中田さんとの出会いだった。 無愛想なうえに威圧的な態度。 最初の言葉なんて、 『名字なに?』の一言だけ。 私が『成田リナです』と答えると、 意外そうにこう呟く。 「名前、マミじゃないのかよッ」 「え、はい。妹が2人おりまして。 マリとレミというんですが、 それを組み合わせて『マミ』にしました」 端正な顔立ち。 見るからに知的そうだ。 黙っていればすごく好みのタイプだけど、 中田さんはなぜか特別私に冷たい。 「あんた最近、執筆意欲ないだろ? いつまでも学生気分でいるなよ。 プロなんだから、お金を貰っている以上、 全力投球で励めっつうの」
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