第1章

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「この居間は、俺とお前の二人で、大音量で映画を見るために特注の防音加工を施していただろ。そのおかげで、銃声だろうが、叫び声だろうが、倒れた音とか、関係なかったわけ」 「ぐっ」愛菜はにらんだ。すべては彼が居間で処刑を終えるために、計画的に仕組んでいたんだ。悔しい。 「ふー。殴ってすっきりした。何が真実の愛だ。くだらない。まあいい後2分でお前との事ももうおしまいだ、ざまあみろ」 愛菜の体がピクッと反応する。真実の愛がくだらない? 理由はわからないが、彼女の中の数々の恋愛映画と、運命の相手である守を馬鹿にされたような気がした。  絶対に許さない。こっちも殺す気でいく。そう誓った彼女は激情とは裏腹に、拓哉の発言を考察していった。君との仲……モノ……結婚指輪でもない。何か他に、手掛かりは……信頼の話し……居間の映画の話し……。映画……信頼……約束……あっ! 「おーい、後30秒しかないぞ」拓哉があおる。 愛菜は答えがわかった。アレしかない。だが、相手を出し抜かなければ。でも持ってるのは携帯しか。それも、変な音にしちゃったのが残ってて。 「10,9.8.7」 もう打つ手なしかと、壁によりかかった彼女は背中に違和感を感じた。
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