第1章

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「あっ、これっ。こーれーよ!真実の愛はずっと変わらないの。そうよ、積極的に求めていかなきゃ。さてさて、今の名セリフ録音できたかな」と、女はスマホの録音データを再生する。この女性には、気に入った恋愛映画の名場面を録音する癖があった。 『君を愛してるよ……永遠に。……キャー!』 「え、やだ、私の声入っちゃってる。録音止めるの遅すぎたのね。また録り直さないと」 ガクッと肩を落とした彼女は、またリモコンに手をかける。すると、背後に気配を感じたので振り向くと、黒いコートに身を包んだ男がいた。 彼女は男を邪険に扱う。 「あー、拓哉(たくや)、おかえりなさい。ご飯、今日も食べてきたんでしょ。私は映画見てるから。早くどっかに行ってよ」 「なあ、愛菜。この世で一番大切なものってなんだと思う?」 「もう、なによ!……大切なものって言ったら真実の愛に決まってるじゃないの。拓哉、一体なにがしたいの?」 「お前はそうだろうな。俺は……信頼だ。仕事だって、人間関係だって、穿ってみれば物理法則だって、すべては信頼関係から始まる。だから、信頼をふみにじった者には罰があってしかるべきなんだ」と耳をつんざくような銃撃音が部屋に響き渡る。
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