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拓哉の言葉に、反射的に愛菜は答える。
「……私よ!」言い終え、愛菜から安堵のため息が漏れた。
目の前の男は棒立ちのまま、呆然としていた。
愛菜は内心ほくそ笑む。なんだ、やっぱり私が好きなんじゃない。拓哉はきっと、守さんに焼き餅をついたに決まってるわ。
「君はバカじゃないのか?」拓哉は冷徹に言い放つ。
「え、違うの?」
「どこの世界に、不倫した相手を一番大切だと思う奴がいる?そんな奴、いるわけないだろ……呆れてなにも言えないよ」
「そんな……でも君との仲で大切なモノって言ってたじゃない」
「ああ、私の信頼にかけて誓うよ。君との仲……つまり君に関係したモノが答えだ。さて、2回目。後2分15秒」
愛菜は深呼吸した。まだ震えが残っている。さっきは取り乱しちゃってとっさに答えちゃった。でも、拓哉の性格上、彼が嘘をつくことはないから……私との何かが本当に正解なんだ。
何か……モノ……高価なモノ……うーん。
高価と言えば、と愛菜はエンゲージリングを思い出す。
そう!指輪じゃないかしら。確か、300万する結婚指輪を拓哉からもらったから……拓哉との結婚指輪に違いない。他にめぼしいものもないから……これね!ふふ……これで私の勝ちね。
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