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勝手に名付けられて、勝手に意味づけられて、逆らわない人間などいない。それでも人は意味を見いだしてしまう。そしてそれに苦しむ。
竜一と辻は自然とひざを突き、双方から坂口の肩を抱いた。青白い顔には微かに赤みが戻り、つりあがっていた目は、潤んでいた。頭を抱え込み、途切れ途切れにつぶやいた。
「俺は……そんな風に……辻……く……みてぇに、なれねぇよ……」
坂口は自分に名付けられた意味を辻の姿に見いだしていたのか。それが、坂口だけに見える天使、なのか。
辻がばしんと坂口の背中をたたいた。
「なるように、なるんだよ!」
坂口は二人の腕の中で深い息をついた。
辻は「人を救う人間」である前に「人を救いたいと願う人間」になった。坂口も何かしら、そうなるのだろう。
そうすると、竜一はなにになるのか。まぁ辻がなるようになるというのだから、なにかになるんだろう。
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