第1章 Hatedperson

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金銭問題は解決出来た為に、叔父の 言った事は守らねばならない。 自動扉の玄関を潜ると、正面に 真新しいロビーが待ち受けている。 勿論誰もいないロビーを見渡しながら 進むと、エレベーターホールに出る。 脇にあるボタンを押したところ、 運良く扉が開く。 時間が遅いので誰も使ってはいない様子、 晃が乗り込むとあっという間に、 最上階に到着。 静かに扉が開くと、前屈みになりながら エレベーターから出ていく。 いつの間にか、猫背で歩く姿が 晃にとってのトレードマークに なっていた。 少し進むと右側に看護師詰所があり、 その方を覗くと誰もいない様だ。 404号室、扉を右に開けるとカーテンで 仕切られた、6台のベッドが置かれている。 一部屋には6人の入院患者を収容出来、 親は一番奥のベッドで寝ている。 どうやら、入院患者は一人だ。 窓際は大きな窓ガラスになっており、 日当たりは良好。 奥まで行くと、ベッド脇に 山本ルミカ(やまもとるみか)が座っている。 「いつもすいません」 晃が声をかけ、軽く頭を下げた。 「今、お母様が眠ったところよ」 ルミカが振り向き、笑顔を向ける。 母の身体は痩せ細り、抗がん剤の影響で 髪の毛は全て抜け落ち、腕や足は 骨と皮になってしまった。 入院して1年、もう死を迎えるのは時間の 問題だろう。 食物どころか水を飲んだだけで全て 嘔吐してしまう。 頬がこけ眼が窪んだ顔は、シロート目にも 死相がハッキリと確認出来る。 「もう、10時間以上眠ったままですわ」 ルミカが力無く答えた。 堺本にも、居心地の悪さは否めなかった。
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