第1章 Hatedperson

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それは、ルミカが元カノだったからだ。 晃が最初に付き合ったのはルミカだ、 彼女は、ポッチャリ顏の小太り気味だが 明るく元気で、何事にも屈託無く笑う。 しかし、晃に新恋人ができた。 新山和代(にいやまかずよ)だった。 晃と和代は、アルバイト先で知り合い、 親密なデートを重ね、婚約までしていた のだ。 和代は知的で身長も高く170あり、 瞳が大きく手脚も長い。 晃にも、勿体無い美しさだ。 晃の必死のアタックで、婚約にまで こぎ着けたのに、彼女は死んでしまった。 悔やんでも、悔やみきれない堺本。 その理由は、今から2年前に遡る。 和代と婚約した晃は、有頂天になっていた のだ。 毎日が楽しくて仕方が無かった、 突然、彼に恐ろしいアイデアが浮かぶ。 子供騙しのような悪戯心、ほんの 出来心だった。 彼女に婚約破棄を電話したのだ、 心にも無い事・・・ ほんの冗談のつもりだった。 彼女にサプライズを与える事によって、 喜ばせてあげたかったからだ。 それは、意地悪でも無く晃の愛だった。 電話した直後から何度も、晃のスマホに 和代のメールが着信されていた。 しかし、全て彼はそれを無視し続けた。 いよいよ彼女との結婚に、彼自身にも バラ色の世界が広がっていた。 嘘の電話を掛けた3日後、 計画通り予め購入していた薔薇の花束を 持って、彼女が住むマンションの2階の 部屋に到着した。 ドアの前に立ち、一旦大きく深呼吸する。 ドキドキの瞬間、そっとドアノブに 手を掛けた。
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