第1章 Hatedperson

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水を打った様に静まり返る病室、 神妙な面持ちで眠っている母を見ている ルミカと晃。 「親もこのまま逝ってしまうのか・・・」 晃の脳裏に和代と母の記憶が鮮明に 蘇えった途端、涙腺が緩む。 それを取り繕う様に。 「ルミカ、一緒に帰ろう」 向き直るルミカが、静かに頷く。 母を残したまま病室を出ると、並んで歩く 2人。 薄暗くなった通路を蒙昧な足取りで 歩いていると、目の前に白いワンピースを 着た女性が立っている。 その女性は長い髪の毛が顏全体を覆い、 誰なのか判別できない。 「カズヨ!!」 咄嗟に晃が叫んだ。 晃には分かっていたのだ、新山和代が ジッとこちらを見ている事実を。 視線を絡める様に晃とルミカが直視すると スッと姿が消えてしまった。 唖然とする2人。 「許してくれ、カズヨ・・・」 余りの出来事に、怯んだ様に呻く晃。 ルミカが手を伸ばしてきた為、 手を繋ぐことに。 エレベーターの扉の前で止まり、ボタンを 押したところ、直ぐにドアが開く。 中に入り1階のボタンを押した。 扉が閉まると、エレベーターが下降して ノンストップで1階に到着した。 エレベーターは1日に何回上昇下降を 繰り返すのであろうか、感嘆しながら 出たところ、何だか様子が変。 ロビーが観えない、更に進むと 霊安室の前だ。 「いつの間にか、地下に下りちゃった」 彼女が、首を捻りながら溜め息を漏らす。 そこは、地下1階にある遺体安置所。 「確かに1階だったんだけど」 晃が辺りを見渡す。 (キーキキ~) 突然、目の前の霊安室の扉がひとりでに ゆっくりと外側に開いた。 絶句する2人、思わず顏を見合わせる。 (ガチャンッ!!!) 「ヒッ!」 今度は勢い良く扉が閉まった為に、 2人が怯んだ様に呻く。
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