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「そっか」
何が『そっか』なのだろうか。
パチパチと瞬きを繰り返すと、
小野寺先生は私の正面に腰を下ろす。
「マミっていうんだ?」
「いえ、本名はリナですが…」
妹2人の名前をくっつけたという、
いつもの件(くだり)は省く。
「いいな、イメージどおりだ」
「な、何がですか?」
「巴さん、ちょっと借りるよ」
「え?小野寺センセ??
こ、困りますっ、マミ先生をどこへ…」
「次回作は調教モノなんだけどさ、
当初の路線から変更して、
ちょっと純な感じのコを出したい」
「え、で?」
「隣りの個室に連れてく。
ちょっとイメージ膨らませるために、
このコ借りるよ」
「そ、そんな、マミ先生も執筆中でして」
「すぐに終わるから!」
「はああ??」
…そんなやり取りの後、
隣室へと連れて行かれ
真横に座らされた。
ち、近い。
「あのさ、同業だし分かると思うけど、
登場人物の経歴とかイチイチ考えるの、
面倒臭いよな」
「そ、そうですね」
「でもそこが結構重要だったりするし」
「た、確かに」
そんなワケで。
私は初対面のこの無愛想な男に、
自分の経歴を洗いざらい
話すハメになったのである。
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