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ワタシ、変なんですぅ
前任の編集者は、岡さんという。
私の呼び方が『オカアさん』と聞こえる
…そう言って、よく笑われたものだ。
岡さんは私の意思をとても大切にし、
よく褒めてくれた。
>性描写は甘いけど、
>マミ先生は心情表現が上手だわ。
>そこが女性読者の心を掴むのよ。
>心の無い行為なんて、
>女は望まないものね。
>この調子で書き進めましょう!
彼女の指示通りにしていれば、
迷いなど無かった…のに。
今、目の前にいる男は違った。
「なんだコレ?
お前、こんな短い濡れ場ってフザけんな。
乙女かっつうの。
薔薇風呂で向かい合って入浴、
ああロマンティック…ってクソかっ!!
温(ぬる)いもん書いてくるなよ、
もっとガッツリ描写しろ」
…あ、あのナカダ氏。
ここはウチの近所の寂れた喫茶店で。
寂れているとは言え、
ダンディなマスターと、
かわゆいアルバイターの男子がですね。
ぎょぎょつ。
み、見てるう。ガン見してるう。
「なんかお前の性描写って、
処女臭いんだよな~。
もっと頑張って励めよ」
「な、何をですか?」
ナカダ氏は声のトーンを落としもせず、
ハキハキと答える。
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