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甘い甘い匂いが台所に漂っている。
「お母さん何作ってるのー?」
匂いに誘われて幼い娘がやって来た。
「お父さんにあげるチョコレートを作ってるの」
母親は黙々と、見た事のない植物をまな板の上で切っている。
幼い娘は小さい椅子を取り出して、コンロの前に置いてその上に乗った。
甘い匂いが更に近付いた。
鍋の中は、黒いチョコと白いミルクが混ざり合いながらグツグツと煮込まれている。
「でもお父さん、最近あんまり帰って来ないよねー」
幼い娘は何気無く疑問をぶつけた。
「そうね……」
母親は切り終えた植物を、上からゆっくりゆっくり包丁を何度も何度も押し付けながら、更に細かく切り刻んでいく。
「お父さん他に好きな女の人が出来ちゃったみたいで、その人のとこに行ってるみたい」
「ふーん」
幼い娘は鍋の中身を見続けながら聞いている。
「だからね、お父さんの愛情が戻ってくるように、このチョコレートを作ってるの」
刻み終わった植物を鍋の中に入れた。
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