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「なんなんだ......」
後ずさりしながら裏口へと消えていく彼女を一瞥して、また窓の方へと向き直る。
入り口から入って、一番奥のカウンター席。
そこに、カイの姿があった。
楽しそうな、だけどほんの少し照れた笑顔を浮かべて、店員の女の子と話している。
今日は特に約束はしていない。
元々お互いに気に入っているお店だったから、約束なしに店でばったり会うなんてハプニング(ん?ハプニング?)は珍しくない。
だけど、だけど。
......普段カウンターに座ることなんかそうそうないくせに。
お客さんの入りを見ると、テーブル席が空いていないわけでもない。
ということは、あえてカウンターを選んだってこと?
その時、店員さんの手がカイの方に伸びて......。
同じタイミングで手を動かしたカイ。
一瞬、手と手が触れる。
お互い咄嗟に引っ込めるけれど、動き出した気持ちはもう引っ込められない。
そしてこれから、君と僕の......。
「ふぉーりんらぶ......」
「は?」
誰だ。私の密かな妄想の邪魔をするのは。
いや、今のは逆に邪魔が入ってくれて助かったのか。
私は一度妄想し始めるとやめられない止まらないのだ。
はっはっはっ。
......って。
「宮園先生?!ななななななな、なぜこんな所に」
「声でかい」
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