第1章

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「そうおっしゃると思って今日は持ってきました」 田神はスーツのポケットに手を入れて、手のひらサイズの機器を取り出した。 形は直方体でメタリックに輝いていた。テレビカメラに向いた面にはレンズが埋め込まれていた。 「思っていたより軽いですね。これだったらつけてても気にならないかも知れません」 丸山は機器を受け取り、しげしげと眺めた。 「ええ、装着していることをあまり感じないように設計しました。自分の手足を想像して下さい。ああ、手足がついてるな、って普段考えませんよね。歩いたり、箸を持ったりする時に意識する程度でしょう。それを目指しました。どうです、装着してみませんか」 「えっ、いいんですか。では、失礼して……」 丸山は機器を顔の近くに持ってきて、動きを止めた。 「これ、どうやって耳につけるんですか?引っかけるような物が何もないですけど」
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