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爆発は起こらず、周りにいた鳩が飛び立っただけだった。
「あれ?なんで爆発しないんだ」
男は尚もスイッチを押した。
「まじで押しやがった……」
貴文は足の力が抜け膝から崩れ落ちた。
千佳と過ごした今までの思い出が次々と浮かんだ。千佳と行った場所。話した会話。笑った顔。声。そして彼女の耳元で爆発する映像が脳裏をよぎった。
「なんかしらけたな。まぁいいや、帰ろ」
男はストラップを放り投げた後、踵を返して公園の出口の方へ歩いて行った。
「あ………」
貴文はショックで立ち上がれず、男が去っていくのを呆然と見ていた。
なぜ、こんなことになったのか。
ストラップを交換しなければ……
ストラップを公園に置き去りにしなければ……
貴文は唸りに似た叫び声をあげたが、公園内に虚しく響き渡るだけだった。
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