アマルフィにて

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アマルフィにて

 イタリア・カンパニア州にあるアマルフィ海岸に来ていた。東エリアにあるアトラーニって崖の街に泊まることになった。  海岸の玄関口となるソレントからサレルノまでの約40㎞の海岸線はコスティエラ・アマルフィターナと呼ばれている。世界一の景色が広がる。  ナポリから列車で40分くらいのところにある。  時計台を見上げる。  チューリップハットの男を見つけた。男は壁をすり抜けて城の中に入っていった。  ルンゴマーレ・トリエステって海岸通りを歩いた。椰子の木が夕暮れの風にそよいでいる。  西の方に行くとヴェルディ劇場があった。  19世紀から続いているらしい。  山のてっぺんにはアレキ城が見える。8世紀に建てられたそうだ。  メルカンティ通りに入る。中世にタイムスリップしたかのような雰囲気。寂れた教会が見えた。  通訳のナタリーが教えてくれた。 「サン・グレゴリオ教会よ、教会のなかは医学学校のキャンパスになっているわ」  学生時代か?懐かしいなぁ。 涼子は子供はいるの?」 「いいえ」 「子供は可愛いわよ」ナタリーの瞳から涙が溢れた。「うちのガキも生きてれば10歳くらいになるのかな?」ナタリーの息子はSIDS《乳幼児突然死》で亡くなっている。やわらかいシーツにうつぶせに寝かせることが主な原因だ。  ナタリーを笑顔にしてやりたい。  市松では願いを叶えるチョコを開発している最中だ。ドゥオーモが目の前に聳え立つ。11世紀に建てられ、聖マタイに捧げられた。  ライオンの像が2体、門を護るかのように置かれてある。階段を降りるとバロック様式のクリプタ《地下聖堂》になっており、マタイの遺体が安置されていた。   「チョコレートは体にいいんだよ?フランスのカルマンさんってお婆さんはチョコが大好きでね?122歳まで生きたんだ?ギネスブックにも載ったんだ」  宿の近くにあるバーで飲んでいると隣の英国紳士が教えてくれた。シルクハットが似合っている。    2日目はカプリ島に渡った。アナカプリ地区に入ると様子がおかしかった。黒い服の連中が彷徨いていた。その中に原田くんに似た男がいた。 「コムスビンが動き出した」  男が言った。   コムスビンはイタリア版のSWATだ。  坩堝は潜入捜査官で原田をマークしていた。  魔法のチョコを奪ってテロを起こそうとしていたのだ。原田の手にかかって死んでいった女は星の数ほどいる。潜水艇が青の洞窟に浮上した。  
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