星降古書店ブックカースとチョコの本

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滑らかな指が文字の羅列を走り、つと1箇所の文章で止まる。 「“ちよこれーとハかゝを樹”──チョコレートはカカオ樹……か」 千尋は裕一に、事の顛末を告げた。 すると、奥で横になっていた祖母の千代が体を起こす。 「それは……上村 是清(うえむら これきよ)さんがくれた本……よく見つけてくれたね」 むせび泣くように本を抱きしめた。 「これで判ったわ……是清さんが呼んでいるのよ……きっとチョコレートの樹で待ってる」 千代が哀願するように、千尋と裕一を涙の眼で見た。 千尋と裕一は、千代が語った是清という人物とチョコの樹を探すことになった。 「千代と是清って、“ちよこれーと”に似てるね」 「何だか謎掛けみたい。では“ーとハかゝを樹”は何でしょうね?」 千尋は縦に記された文章を眺めた。 「それよりアナテマ」声をひそめて「何で岩手県の文献を探さないといけないのよ」 『おそらく上村是清は上村勝爾の縁戚ぞ。上村勝爾は岩手大学で校長をしていた。手掛かりがあるのなら岩手県に違いない』 「岩手県って言ったって、カカオの樹がそんな寒いところで育つの?」
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