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電車の中、窓に映る僕の表情は灰色。
がむしゃらに生きていくと決めたあの日からどれくらい時が経ったのか。
折りたたみ携帯の出始めからだから……、
あぁ、末恐ろしい。十年以上は経っているのかもしれない。
道理で歳もとるはずだ。
「次は?、〇〇ー。お降りのお客様はお忘れもののないようにー」
気の抜けたような電車のアナウンス。僕はまだまだ先だ。
目の前の女の人が邪魔そうに僕を睨みつけていた。
「あのー。降りるんですけど?」
気の強そうな声。年下であろう彼女に小さな声ですみませんと言い、横にずれる。その時、微かな舌打ちとともに、デブが電車乗るなよと言われた気がしたが気にしないことにしよう。
ポッカリと空いたその席に腰を下ろし、隣とぶつからないように体を縮こませる。
僕と同じスーツを着たサラリーマンとかなり薄く化粧をしているスカートの短いOL。
2人とも先ほどの女性の暴言を聞いていたのだろう。同情的な視線を向けてくれた。
そんな視線に僕は会釈をしながら、スマートフォンを取り出す。
メールもメッセージも何も無い。
勿論、着信も。
分かっていたことなので、暇潰しにゲームを始めた。
至極単純な作業ゲーム。
目的の駅に着くまでは暇は潰せたと思う。
駅に着いて、改札口を出ると、怖面のお兄さんがチラシを配っていた。風俗だ。
必死で通行人に勧めてるも怖そうな容姿からすぐに逃げられている。
ボーッとその様子を見ていると視線に気づいたのか嬉々とした表情で僕に近づいてきた。興味があると思われたのか。
「おにーさん。サービスするよ? 遊んでいかないかい?」
どこか女っぽい口調。よくよく見ると洋服もソレっぽい。
怖つらのオカマは確かに逃げたくはなる。
「カワイイ子、いっぱい、いるし、安いし、どおう?」
最後、下手くそなウィンクを投げられた。
何だか、そのウィンクに不思議な愛嬌を感じ気づけば首を縦に振っていた。
彼は顔を輝かせるとこっちですぅと言って歩きだした。
歩き出して約数分。煤けた看板と古臭いビルの前に到着。
彼はニコニコしながら、僕を入口に通して受付を始めた。
簡単なルール説明と利用方法。
それから、女の子の写真。
茶髪の24の女性を選んでみた。
特に理由はなし。
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