ミス・ヴァレンタインの贈り物

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 「話があるんだ」  ボンボン社で働くレベッカ・ヴァレンタインは同僚のクリスチャン・ホワイトデーに突然そう言われ面食らっていた。 ディスクで山積みの書類と格闘し、顧客からの質疑応答に苦情の処理などに追われあっと言う間に日が暮れる毎日で恋愛をする暇もなかったが、それでも密かに好意を寄せる相手はいた。  「話ってなに?」  レベッカからすれば、クリスは恋愛の対象外だが、そんな男から、大事な話の為に会社の屋上に来て欲しいと言われたものの、勤務態度が悪いとか素行が成っていないとクレームがくるのではないかしら?  という事しか頭になかったが、クリスが口にしたのはそれより以外なものだった。  「俺、きみのことが好きになった」  「へ?」レベッカは返答に難色を示した。  「私たちって、接点はない筈だけど」  お互い一緒に食事をしたことも、話したこともないのに、接点のない相手のどこを好きになったのかレベッカは疑問だった。然し、クリスは疑問の答えを知っているようだった。  「そんな筈はない。きみは俺にヴァレンタインのチョコをくれただろ?」  クリスの言う通り、レベッカはチョコレートを渡してはいるが、それは女性社員から男性社員のみんなにというニュアンスの所謂義理チョコのようなもの。  「ちょっと待って、あれは」  「義理だったとでも言うのかい? 手紙まで添えて"本命"だと書いてあった。それと君の名前もね、それはどういう事なんだ?」 
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