スイートメモリーズ

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幼い頃の記憶がよみがえる。 『チョキ以外出せばいいだろ?俺、グーしかだしてないもーん』 そうだ、パーを出せば勝てる。 私だって子供じゃないんだから、成長してますから! チョコにこだわるあの頃とは違うもんねー! 「ぽん!」 ……あれ? 絶対グーを出すと思ってた陽ちゃんの手は、なぜか開かれてて 「あー!宮田くん、惜しい!あいこだねぇ」 「ほんとだ!めずらしいね?みさがパー出すなんて」 え?ちょっと待って?もしかして… 2人とも私がいつもチョキ出すの知ってた? 気づかれてないと思ってたのに、それはとっくに見抜かれてたみたいで そういえば、ジュースを買いに行く時はいつも私だったと思い出した。 「てわけで、一緒に買いに行ってきまーす」 手をひらひらさせながら、私の手を掴んだ陽ちゃんが、色めき立つ友達を尻目に私をグイッと引っ張ってそのまま廊下まで連れ出してくれる。 呆然とする私の手を握ったまま、自動販売機までくると、陽ちゃんはようやく手を離した。 「お前、パーも出せるんじゃん。せっかく負けてやろうと思ったのに。あいつらんときもチョキ以外出せって」 ククッと笑う陽ちゃんが、その時初めて私を助けようとしてくれてたんだってわかった。 「なんで…」 意地悪ばっかりしてたくせに、なんでこんなことするの? 「お前に意地悪していいのは、俺だけだから。な?」 ニッと笑いながら、頭をくしゃっと撫でられて、なんだかわからないけど、涙が溢れた。 「えっ?ちょっ!おい!泣くなって!」 思い出した。 あの頃から陽ちゃんは意地悪だけど優しかったってこと。 階段の向こうで、泣きながら歩いてくる私をずっと待っててくれたこと。 そばで慌てる陽ちゃんを見上げて、泣きながらへへっと笑う。 「お前!泣くか笑うかどっちかにしろよ!すげー不細工だぞ!」 私が笑ったのを見て少し安心したのか、いつもの陽ちゃんに戻って憎まれ口をたたく。 でももう嫌じゃない。 意地悪するのは優しさの裏返しなんだって気づいたから。 fin
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