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お気楽に笑うドロフェイに深いため息をこぼした。
拓也さんは私にとって、本当に心の底から尊敬するダンサーであり、私のバレエの神様でもある。
長年憧れてた人が突然現れるんだもの、心の整理なんてまだついていないままだ。
「ああ、でも拓也さんのデジレ王子最高にカッコイイだろうな。でもそんな畏れ多いこと出来ないもん! ね、だからドロフェイ踊ってよ!」
頭の中で拓哉さんが華麗に踊る姿を思い浮かべて、うっとりと夢心地になる。
「マドカ!」
突然ドロフェイが私の名前を呼んだかと思うと、鼻の頭をぎゅっと抓られた。
「言っとくけど、俺は誰かの代わりの役を踊るんじゃないよ。俺はいつだって、俺だけの役を踊るんだからね。俺はプロだよ、代わりの役なんてまっぴらごめんだ」
そこではっと気がついた。
私、なんて失礼なことを言ってしまったんだろう。
”拓也さんに踊ってもらうのは恐れ多い、だからドロフェイが踊って”。
それじゃあ遠回しに、拓也さんの代わりにドロフェイが踊って、と言っているようなものじゃないか。
「ごめんなさい」そう言おうとドロフェイを見たその時、ドロフェイは姿勢よくすくっと立ち上がり舞台中央まで歩きそこでとまった。
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