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「マドカの一言ですっごくムカついたから、もうマドカが他のデジレ王子で満足出来ないくらいの踊りを見せつけてあげる。俺の踊りにメロメロにさせて、虜にさせちゃうからね」
そう言って、不敵に、妖艶に笑ったドロフェイに胸がどくんと高鳴る。
「ほら邪魔だよマドカ、はやく曲!」
語尾を強くしてそういったドロフェイ。
私は慌ててデッキの横の椅子に座って、『眠れる森の美女』3幕デジレ王子のヴァリエーションの曲の番号を探し、再生ボタンを押した。
顔を上げると、いつの間にか舞台上手へと移動していたドロフェイは軽く腰に手を当てて軽く目を閉じた。
曲が流れだしたと同時に目を開き、私に向かって微笑みを浮かべたドロフェイ。
その瞳はまるで、愛おしい人を見つめるような瞳。
幸せに満ち溢れ、愛おしさを映す。
デジレ王子のヴァリエーションは、四拍子。
ゆっくりとした曲調の中に、王子らしい勇ましいイメージを持てる曲だ。
ドロフェイが踊る一つ一つのパから、色々な感情が見えた気がした。
童話の中の『邪悪なカラボスを倒し、オーロラを救い出し一目惚れして結婚』という淡々とした現実味のないおとぎ話ではなく、
ドロフェイの踊りは、1人の「デジレ王子」という人間になりきった踊りだ。
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