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だからこそ、そここら感じるのは「喜び」「愛しさ」「幸せ」といった、本当に生きている人間が感じる、生身の人間の感情。
・・・これが、ドロフェイの実力。
私、なんて失礼なことを言ってしまったんだろう。
最低だ、大馬鹿だ。
誰だって代わりの役なんてやりたくない。
たとえそれが主役であろうとも、自分のために選ばれて用意された役を演じたいに決まっているのに。
私だって、代わりの役なんて絶対に嫌なのに。
後悔と申し訳なさとで、ドロフェイの踊りを見ているのが辛くなり唇を噛み締めて俯いた。
ほんとバカだ、私って。
「マドカ何してんの! ほら、パ・ド・ドゥの締めくくりのコーダだ。一緒に踊ろうよ!」
いつの間にかオーロラとデジレ王子のパ・ド・ドゥの軽快なテンポで華やかなコーダの曲がかかっていた。
一度聞いたら耳に残るこの曲が、私は好きだ。
ドロフェイが舞台中央で片脚を軸足に立ち、もう片方の脚を90度以上にあげて回転するフェッテ・ア・ラ・スゴンドを始める。
キレといいスピードといい、ブレない軸に安定した回転は、目を見張る。
レベルの違いを見せつけられた。
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