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「マドカ。俺は君をローザンヌで一番にさせるよ」
突然真剣な声でそう言ってきたので不思議に思って振り返れば、ドロフェイは目を細めて空を見上げていた。
その美しい横顔に、思わず見惚れてしまう。
「それでマドカが俺のパ・ド・ドゥのパートナーになってさ、夢を実現させるんだ」
「ドロフェイの夢って、新しいバレエ団をつくること?」
「それもあるけどね。だからサクッとスカラシップを取って、ロシアにおいでよ」
にこにこと笑顔でそう言った。
ドロフェイの言うスカラシップとは、入賞者には世界の著名バレエスクールへ1年間無償で留学する権利と、その間の生活援助金として16,000スイス・フランが与えられる、ローザンヌ成績上位者のための特典だ。
「ドロフェイも一緒に頑張ってもらわないと困るよ」
「俺も? しかたないな~」
ほら行こう、と言って走り出せば「待ってよ、マドカー!」とドロフェイが追いかけてくるのが分かり、少し頬がゆるんだ。
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