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「……さっさと終わらせて。ねえ、早く」
僕等は敵と味方、相反する存在。
どうにも僕は、君のことを殺さなければならないらしい。この指で無機質な物質を操って、君の息の根を止めなければならないらしい。本当におかしな話だけどね。
「……早くしてよ」
そう。おかしなことがあり得てしまうんだ。
「っ、いやだ」
僕等は何を得て何を失おうとしている?何者になろうとしている?何処へ向かおうとしている?
「いやだ……っ、いやだいやだいやだ…!殺したくない!僕は、何も、……壊したくない……」
ーああ、この手で、君を。
ー君を殺す……?
「…早くしろって言ってんだろ!さっさと殺せよ!思い出に縋って理想を描いてる場合じゃないだろ?もう、僕達は仲間じゃない。…君だって、分かってるだろ?」
悲しそうに君は笑う。
その笑みがあまりに綺麗で、美しい記憶に内包されている君の笑顔のままだったから、僕はどうしたらいいのか分からなくなった。
「僕は君のことを憎んだりしない。だから安心して、僕のことを殺して」
目を瞑る。何も分からない。もう何も、全て。
まるで宇宙の彼方に放り出されてしまったかのようだ。真っ暗で、寒くて冷たくて、誰も助けに来ない深淵。僕は一人で泣いている。理想を掲げた人間達は煌めく星々に手を伸ばし、僕のことを嘲笑する。
「君に出会えたことだけが、僕にとっての幸せだったよ」
やめてくれ。どうして優しい言葉をかけるんだ。
どうして全てを許したような顔をして、優しく微笑みかけるんだ。
涙が頬を伝い、泣きながら引き金に手をかける。
ギュッと目を瞑ると、僕は君の最期の言葉を聞いた。
「ーーーーだよ」
その言葉はきっと、宇宙に色を与えてくれる。
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