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「…愛してほしい」
自分が希求しているのは、一握りの愛情だけなの。
お願いだよ、見えない愛をちょうだい?
殴っていいし、蹴ってもいいよ。耳に穴を開けてもいいし、眼を見えなくさせてもいいよ。カッターでいっぱいいっぱい傷つけてもいい。
死んじゃうくらい壊していいから、愛を与えて?
そして願わくば、沢山愛してくれた後に殺してくれないかな。
「愛なら僕があげるよ?レンちゃん。
パパが何て言おうともういい。僕とレンちゃんはずっと一緒。寂しくない……ずーっと、一緒だよ」
ここが夢なのかそうでないのかも分からない。
目に飛び込んでくる視界は赤く染まっていて気持ちが悪い。
左腕をそっと持ち上げて、右腕に触れてみた。
何か、じんわりと湿ったものに触れる。痛くはない。自分の価値がまた一つ無くなっただけだ。
「ゆ、る……、して。赦して、赦して赦して……お願い、赦して」
赦しを乞う矛先を、自分は知らない。
殺してほしいけど、最後に「赦してあげる」と言って欲しかった。
死ぬ前に幸せな夢をみることぐらい、許されたっていいじゃないか。
「……僕だけがレンちゃんのことを許してあげるね。駄目で価値のない不良品のレンちゃんのことを愛してあげる。…ほら、僕を見て」
うん、わかった。赦してくれるなら、愛してくれるなら、最期の力を振り絞って身体を動かそう。
「ふふ、よく出来ました」
呼吸が上手く出来ずに息を荒げる自分を優しく抱き締めながら、彼は無邪気に言う。
手の甲に付けられた幾重ものボディピアスを強い力で引っ張られる。
痛い、痛くない。辛い、辛くない。
ぽたぽたと血がシーツに垂れて、頭の中がぼんやりとしてくる。
人間じゃないよ。だから、苦しくないよ。心はないよ。だって、そんなものとっくに捨てた筈だもの。
「レンちゃんはいけない子だね」
「…見えない愛が憎い」
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