恐怖

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怖かったんだ。 何が怖かったのだろう。明確な怖さを思い描こうとすると、途端に頭の中が真っ白になる。 とにかく、何をするのも恐ろしく、生きる許しを乞わなければならないような気がした。不可視の神なのか、それとも漠然とした崇拝対象なのか。それすらもよく分からない。 ただ僕は、生きる理由を模索していた。死にたい、と言いながらも生きたかった。矛盾の塊である自分を忌み嫌い、蔑み、殺してしまおうとした。 父は僕に言った。「お前はおかしい。普通じゃないんだ。死にたいのなら、さっさと死んじまえ」と。僕はその言葉を聞いた時、特に何とも思わなかった。 どうでもよかったし、自分がおかしいのは何よりも僕が一番に自負していた。 「助けて、助けて。死にたい、死にたくない」 そっと呟いてみると、悲しみさえ忘れてしまった涙がポタリ、と頬を伝う。僕は一体何がしたいのだろう?何になりたいのだろう? とにかく、怖いんだ。 助けを求め、手を差し出されて。もしその先で、裏切られたらどうする? もう僕は、そんな仕打ちに耐えられない。 だったら何も望まなければいいんだ。そうすれば、二度と傷つかなくて済む。世界を閉ざしてしまえば、見たくないもの全て、見なくて済むだろう? 過去に縛られた僕は、いつも何かに怯え、他人の為に生きてきた。そんな自分のことを嫌だ嫌だと思いながらも、僕は臆病だから。 だから、自分の感情なんて捨ててしまえばいいのだと。そう思った。幸せを望む自分など、脇道に追いやってしまえばいいのだと。 それなのに、どうしてなんだ。 どうして僕は泣いてるんだ。どうして悲しいんだ。どうして、希望を捨てられないんだ。 幸せになりたい。誰かが幸せにしてくれるって。この暗闇から救い出してくれるって。 そう、信じてしまうんだよ。 「アホらしいね、ほんと」 泣き笑いをしながら、静かにそう囁く。 僕は大馬鹿者だね。自分の人生を、人生の為に生きることができない。勇気のない、臆病者。 僕は、そんな自分のことが大嫌いだ。 目を閉じると、光のない暗闇が視界全体に広がる。せめて、小さな星一つくらい輝いていてくれてもいいのに、と思いながら僕は一雫涙をこぼした。
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