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今日の空も相も変わらず綺麗だな、とふと思った。
ああ、よかった。「綺麗だ」という感情を僕はまだ捨ててはいなかったようだ。
死にたいの?とよく聞かれる。辛いことがあるのなら、それを包み隠さず私に言ってごらんなさい、とも。大人達は庇護されるべき対象の僕を守ることに無駄な責務感を抱く。子供を守ることが大人の義務だから。そして、偽善を振りかざすことがこの世における善行だから。
「言っておくけど、僕は死にたいと思ったことはないんですよ」
声帯はちゃんと音を紡ぎ、実在するのか不明瞭な感情を言葉に作り替えた。
喉がヒリヒリと痛んだ。左手を喉仏にそっと触れると、生温かい自身の皮膚を切り裂きたくなった。
「…君を責めるつもりはないけどね。最近の君の自傷行為はあまりに酷い。このままだと、普通に生活できなくなってしまうよ。ほんの少しでいいから、君自身に価値を見出してごらん」
分かってるね?と医師は強い語気で言葉を続ける。
反論することが面倒くさいから、僕は適当に「うん」と相槌を打っておいた。嘘を付くことに最早抵抗感はなく、寧ろ一種の快楽さえ感じようとしている僕の心は、とっくに腐っているに違いない。
死にたいんじゃない。
自分の体を傷つけたい訳でもない。
きっと僕は誰よりも生に執着し、見えない誰かに生きる許しを乞うている。
いつもいつも。眠れなくなっても、学校に行けなくなっても、ご飯を食べれなくなっても、僕が僕でなくなっても。
それでも僕は、どす黒く醜い承認欲求とどう向き合っていいのか分からないまま、誰よりも幸せになりたかった。幸せになって、普通になりたかった。
それだけのことが、僕には出来ないのだから笑ってしまう。
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