《覚醒編》目覚め

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《覚醒編》目覚め

(一)  また僕は夢を見た。  あれから何年も経ったから、あの力は偶然だと思っていたのに……僕を呼ぶ懐かしい声。そして、ひまわりみたいに明るい晴れやかな笑顔。  でも、太陽を背に受けているせいで、それが誰かは鮮明に見えなかった。 ――もう大丈夫だよ。おじさんが圭一朗君やお祖父さんを守ってあげるから。  そんな言葉を何度も聞かされたら、この広い屋敷の暗闇だって怖くはなかった。  最後に彼に会ったのは、もう何年も前のことだろうか?  顔もすぐには思い出せないくらい、遠い昔のことだった。 「あのぉ。今、お時間ありますか? さっきからここにずっといるから、待ち合わせかなぁって思っていたんですけどぉ……なんだか、誰も来そうにないからぁ」  こうやって見知らぬ人に話しかけられるのは、何年ぶりだろうか?  外の世界を漂い始めてから、一人の孤独を余計に感じるようになった。  自分は何処にも存在していないのではないかと、不安だったけれど……どうやら僕はちゃんとこの世に存在しているようだった。 「あっ、決して変な勧誘とかじゃないですよ。今、カットモデルを探しているだけです。美容院のモデルです。あれ? あなたは外国の人なのかな? わかります? 私の言っていること。び、よ、う、い、ん、ですよ」 「……美容院のカットモデルですか?」  思っていた以上に、一言目が滑らかに口から出た。 「なぁんだ、わかっているじゃないですかぁ。約束していたモデルが来なくて、困っているんですよ。代わりに髪の毛をカットする、練習台になってもらえませんか? 私、美容師の免許を取り立てで、腕に自信はないんですけどぉ。それでも……勿論、タダでお願いしているんです。もし、お時間があるな ら一~二時間ほど都合をつけてもらえませんか?」 「良いですよ。特に予定もないですし、僕でお役に立てるなら」
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