(三)

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「それなのに私は全てを忘れてしまった……本当はあんな偽りの恋人ではなく、あの人を愛していたことを。これは事故なのよ、私が足を滑らせただけ。お願いだから、あなたがそのことを証明してちょうだい」 「こうなった原因は僕から説明できます。でも、あなたの思いは自分から優作さんへ伝えた方が良いでしょう。 そうしないと、優作さんは一生あなたを死に追いやったという十字架を、背負って生きていかなければならなくなってしまう。そして、あなたの後悔の念も消えることはないでしょう」  恵子は死を恐れていないようだった。だが、唯一口にできなかった言葉があるために、このまま死ぬわけにはいかないのだ。 「恵子さん、己のプライドよりも大切な物が何か、あなたは知っていますよね? 優作さんに思いの丈を告白することがどんなに重要かわかっていますよね?」 「え、ええ……も、もちろん」  夢の中とは打って変わって、穏やかな笑顔を浮かべ恵子が頷いた。と、同時に役目を終えた光のベールが徐々に消え始めていった。 「それならば、あなたの魂は救われるでしょう……」
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