(四)

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「はぁあ、ピカソは尊敬する画家の一人ですが、私はあの女性関係にルーズなところが苦手です。相続問題を理由に妻との離婚を拒否したり、愛人同士を戦わせたりして……私生活を知れば知るほど、幻滅してしまいました」 「まぁ、まぁ、君の個人的な意見はそこまでにしてくれよ。作品を取り扱う我々には、画家本人の私生活に口を挟む権利はないからね。すばらしい作品さえ残してくれれば、あとは目をつぶるだけだよ」 「そうですよね。残された作品が素晴らしければ、私生活なんて当事者以外は関係ありませんものね。特に故人の場合は、ですよね、オーナー?」 「そう、その通り。だから、君は黙ってその絵を保管しておきたまえ」  いたみうけの力が開花したとなれば、これからも圭一朗の描いた絵画が何度も送られてくるだろう。  それを香織が不審に思わないはずがない。好奇心旺盛で察しの良い彼女のことだ、必ずどこかで圭一朗の存在を嗅ぎつけてくるだろう。  そして、間宮圭一朗と天羽秋文との関係も。  しかし、今はまだ秋文には心の準備ができていなかった。だからこそ、できるだけ香織の興味を引き離す時間が必要だった。  彼が圭一朗と再会できる、その時まで。
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