(四)

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 都内、間宮画廊では。 「オーナー、Kからまた届いたのですが……」  浮かない表情の三島香織が、圭一朗の新作が届いた旨を伝える。 「どうした、浮かない顔をして?」 「それが、だって……オーナーだってこの絵を見れば、わかりますよ」  そう言って新作を見せる。 「え? こ、これか? 本当にKから送られてきたんだよな?」 「はい、間違いありません。いつもの宅配業者から、いつものように届きました」 「いや、参ったなぁ」 「本当ですよ。何ですか、これ」  香織が毒づくのも仕方がない。目の前にあるのは平凡な少女の肖像画だったからだ。 「確かに相変わらず惹きつけられる作品です。力強いタッチで、生きる希望を見出せるような表情も見事です。ですが、どう見ても単なる肖像画ですよね」 「あぁ、そうだね」 「あの非凡な才能のKが、こんな直球勝負の肖像画を送ってくるなんて! 一体、彼に何があったんでしょうか?」  いたみうけは死に逝く者の痛みを受ける。その痛みを癒すため圭一朗は絵を描くのだが、今回は痛みを受けなかったのだろうか?  いや、誰も死に逝く際には差があるものの、それなりの痛みが伴うものだろう。それなのに、全く痛みを感じなかったとは信じがたい。  それならば、圭一朗自身に何か変化が起きたのだろうか?  この絵画が圭一朗からのメッセージだとしたら、どう読むべきなのだろうか?
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