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遺書
僕はもう疲れました。
オトン、オカン、ごめん。
42年間ありがとう。
先立つ不幸をお許し下さい。
弘志、オトンとオカンのことは任せたぞ。あんまり心配かけるなよ。
西川貴志
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そして僕は、一応まだ恋人である秋子に最後のLineを打った。
おまえと過ごした3年
色々あったけどそれなりに
楽しかったよ。ありがとう。
幸せになってくれ。
靴を揃え、両手をフェンスにかけたその時
もう一つやり残したことを思い出した。
一応最後に
もう10年以上の腐れ縁である女友達・朝田栞にもLineを打った。
朝田、いろいろ世話になったな。
事情は省くが
僕は旅に出ることにする。
しばらく連絡できないけど
心配すんなよ(・∀・)
…朝田にはこれぐらいでいいだろう。
2月15日
奇しくも今日は、僕の誕生日前日だった。
42歳最後の夜
突風が吹き荒れる5階建ての団地の屋上は、地上よりも遥かに風が強かった。
僕のトレードマークである大事なメガネがふっ飛ばされそうになった。
早くしないと僕…凍えて死んじゃうじゃないか。
気を取り直して再びフェンスに手をかけたその時
スマホが振動していた。
今しがたLineを送ったばかりの、朝田からの電話だった。
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