最悪な目覚め

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待て、今何時だ。 今日は大事な会議がある。遅れるわけにはいかない。 まだ霞む視界の中で時計を探す。 それは案外すぐに見つかって、ベッドの枕元に置いてあった時計の針が指す数字を、眉間に皺を寄せ、目を細めながらも読んだ。 よかった、まだ時間はある。 イレギュラーな事態が起こっている今、一旦家に帰ってシャワーを浴び、着替える時間くらいは欲しかった。 それに十分な時間がある事を確認した俺は、なるべく音と振動を与えないように息を殺してベッドから脚を降ろすと、その辺に脱ぎ捨ててあった服を手早く着てコートを羽織り、近くにあった自分の鞄を掴んで音を極力出さないようにそっと部屋を出た。 その最中は衣が擦れる音さえも大きく響いているような気がして気が気じゃなかったが、女が起きた気配もなかった。 エレベーターに乗って手摺りに体重を預けるようにしてもう一度項垂れると、ほとんど無意識に止めていた呼吸をやっと吐き出す。 一階に着くまでの間、俺はずっとその体勢のまま、さっきまでの事を反芻していた。 これじゃ誰かが途中で乗ってきたりしようものなら不審者に思われてしまう。 だが幸いなことに、一階までの長いようで短い時間の間、誰もエレベーターに乗っては来なかった。
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