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狭い隠し入口から家の中に侵入して、壁の中をひたすら走る。
青い帽子が揺れながら弾み、ホコリっぽい空気を頬で感じながらジンは全力で駆けた。
部屋の屋根裏に出て、そこから一枚板がズレたままの穴に飛び込む。
暗い押し入れの中に続く穴を抜けると、細く光が差し込む真っ暗な空間に出る。布団のホコリの匂いがする。
隙間からわずかにこぼれる光を浴びながら、押し入れの扉を押し開ける。
先程まで鳴っていたはずのラジオの音が無い。
変わりに聞こえるのは静けさなどではなく、仲間の名前を呼ぶマサルの声だった。
「オードリー!オードリー!オードリー!」
何度も繰り返して叫ぶ声がカスれるどころか、潰れて濁音混じりになっていた。
マサルは震える腕を自らの腕で必死に押さえながら、自分の剣を邪夢に向けていた。
持ち上げられたオードリーを食わせないために、こちらに注意を引き付けたかった。
大きな邪夢が跳躍して、部屋の床部分に移動してくれたのは幸いだった。上に跳ばれていたらそこに辿り着く間もなくオードリーの身体は食われていただろう。
マサルは走り、触手に追われながらも剣で邪夢の身体を突いて回った。
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