第三夜 長い夜(後編)

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 光の弓矢は連続して空間を突き抜けた。  その全てが邪夢の触手をことごとく打ち払い、マサルの目の前に道を作る。 「しゅううちゅうううう!!」  ジンの瞳が血走る。  邪夢の巨体を全て、部屋の空間を全て、  マサルの居場所、  オードリーの姿、  神の眼があるのなら、今のこの瞬間だ。 「1、2、3、4、5、6……!!」  カウントしながら時計の一秒よりも速く弓を弾く。今までの最大速射数は27本だ。ジンはそれを約20秒で完全射撃する。  その全ての矢は空間に青い軌跡を描いて、流星のように走り、邪夢の触手を射抜いていった。  剣を拾う事が出来ずにマサルが空手のままジンの元に駆け寄る。 「ジン!どうしてここに!?」 「詳しい話はあとだ。僕たちのミスでオードリーをあんな目に合わせた。償いはする」 「そんな!戻って来てくれて助かったよ。絶対にもう死んでた」 「オードリーの触手が離れない?」 「一本だけ身体を貫いてるんだ。解るかい?」 「……あれか。よく見える」  そう言うとジンは目を見開いたまま、速射を始めた。  ギィィンッ!ギン!ギン!  一本目もニ本目も、そのまた次も、全てオードリーを捕らえたままの触手、その一本に打ち込んでいく。  傍らで息を呑むマサルにジンが言う。 「そこに落ちてるオードリーのムチを拾ってくれないか」 「あ、ああ。コレかい?どうするんだ?」  床に転がっていた黒い皮製のムチを、拾って渡しながら尋ねる声に、ジンが弓を下ろしながら答える。 「新しい使い方を覚えたから試してみる」  オードリーを捕らえている触手には全部で7本の矢が突き刺さっていた。ほぼ一箇所に集中された矢は、触手に僅かな亀裂を産んでいた。
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