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光の弓矢は連続して空間を突き抜けた。
その全てが邪夢の触手をことごとく打ち払い、マサルの目の前に道を作る。
「しゅううちゅうううう!!」
ジンの瞳が血走る。
邪夢の巨体を全て、部屋の空間を全て、
マサルの居場所、
オードリーの姿、
神の眼があるのなら、今のこの瞬間だ。
「1、2、3、4、5、6……!!」
カウントしながら時計の一秒よりも速く弓を弾く。今までの最大速射数は27本だ。ジンはそれを約20秒で完全射撃する。
その全ての矢は空間に青い軌跡を描いて、流星のように走り、邪夢の触手を射抜いていった。
剣を拾う事が出来ずにマサルが空手のままジンの元に駆け寄る。
「ジン!どうしてここに!?」
「詳しい話はあとだ。僕たちのミスでオードリーをあんな目に合わせた。償いはする」
「そんな!戻って来てくれて助かったよ。絶対にもう死んでた」
「オードリーの触手が離れない?」
「一本だけ身体を貫いてるんだ。解るかい?」
「……あれか。よく見える」
そう言うとジンは目を見開いたまま、速射を始めた。
ギィィンッ!ギン!ギン!
一本目もニ本目も、そのまた次も、全てオードリーを捕らえたままの触手、その一本に打ち込んでいく。
傍らで息を呑むマサルにジンが言う。
「そこに落ちてるオードリーのムチを拾ってくれないか」
「あ、ああ。コレかい?どうするんだ?」
床に転がっていた黒い皮製のムチを、拾って渡しながら尋ねる声に、ジンが弓を下ろしながら答える。
「新しい使い方を覚えたから試してみる」
オードリーを捕らえている触手には全部で7本の矢が突き刺さっていた。ほぼ一箇所に集中された矢は、触手に僅かな亀裂を産んでいた。
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